100作を選んでみることにした

「100作を選んでみることにした」

最初に書く記事のくせに大きく出たものだ。

 


まずは注意点(言い訳)をいくつか。

・”100冊”ではなく”100作”と銘打っている。小説メインでいくつもりではあるが、小説以外が入ってくる可能性はある。

・コメントは随時追記していく予定である。

・(分類/yyyy)の部分に記載されている年号は、その作品発売/発表時のものとする。

・項番の次に記しているのは著者名である。映画/ドラマ/アニメ/ゲームについては、どのポジションの方の名前を書くか迷ったため、その部分は記していない。

・100作の順序については、コメントで記載のある場合を除いて意図はない。

 


そして、自分でもきちんと定義できていない100作の基準について。

影響を受けた、ある一文が好き、あのシーンが印象に残っている、なにかのきっかけになった、なにか新しいことを知った。様々な理由がある。ときにはマイナスな理由で選定しているものも存在する。

それらの理由が混ざり合って、選ばれた100作であるため、どれがどの理由に属するという区別は難しいことはご理解いただきたい。

 


最後に、この記事を書く背中を押してくれたSNSのフォロワーに感謝を。

 


では、始めようか。

 

※以下に100作のリストを先に記す。コメントはリスト以降にそれぞれ記す。

1. 結城浩 数学ガールシリーズ(小説兼参考書/2007~)
2. 新海誠君の名は。』(小説/2016)
3. 河野裕 階段島シリーズ(小説/2014~2019)
4. 七月隆文ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(小説/2014)
5. 五十嵐雄策『七日間の幽霊、八日目の彼女』(小説/2016)
6. 織守きょうや『記憶屋』(小説/2015)
7. 霧友正規『僕はまた、君にさよならの数を見る』(小説/2016)
8. J.K.ローリング ハリーポッターシリーズ(小説/1999~2008)
9. 三秋縋『君が電話をかけていた場所』『僕が電話をかけていた場所』(小説/2015)
10. 住野よる『きみの膵臓をたべたい』(小説/2015)
11. 河野裕 サクラダリセットシリーズ(小説/2009~2012)
12. 森見登美彦『夜行』(小説/2016)
13. 住野よる『よるのばけもの』(小説/2016)
14. 『サマーゴースト』(映画/2021)
15. J.K.ROWLING『FANTASTIC BEAST AND WHERE TO FIND THEM  THE ORIGINAL SCREENPLAY』(台本/2016)
16. 『水族館ガール』(ドラマ/2016)
17. 夏川草介『本を守ろうとする猫の話』(小説/2017)
18. アガサ・クリスティーそして誰もいなくなった』(小説/1939)
19. 河野裕『最良の嘘の最後のひと言』(小説/2017)
20. 佐野徹夜君は月夜に光り輝く』(小説/2017)
21. 浜口倫太郎『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』(小説/2017)
22. ピーター・ブラウン他『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(自己啓発/2016)
23. 古野まほろ『時を壊した彼女  7月7日は7度ある』(小説/2019)
24. 宿野かほる『ルビンの壺が割れた』(小説/2017)
25. 荒川弘鋼の錬金術師』(漫画/2002~2010)
26. 『LIAR GAME』(ドラマ/2007(シーズン1) 2009~2010(シーズン2))
27. 『TRICK』(ドラマ,映画/2000~2014)
28. loundraw『Hello,light ~loundraw art works~』(画集/2016)
29. 河野裕/河端ジュン一『bell』(小説/2014~)
30. 小坂流加『余命10年』(小説/2007)
31. 高田由紀子『青いスタートライン』(小説/2017)
32. 辻村深月かがみの孤城』(小説/2017)
33. 知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』(小説/2017)
34. げみ『げみ作品集』(画集/2016)
35. 森沢明夫『たまちゃんのおつかい便』(小説/2016)
36. 河野裕 架見崎シリーズ(小説/2017~)
37. 宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(小説/2017)
38. 『バテンカイトス  終わらない翼と失われた海』(ゲーム/2003)
39. 『空の青さを知る人よ』(映画/2019)
40. 王城夕紀『青の数学』(小説/2016)
41. 沖田円『きみに届け。はじまりの歌』(小説/2017)
42. 有川浩『キケン』(小説/2010)
43. 知念実希人 天久鷹央シリーズ(小説/2014~)
44. 綾崎隼 ノーブルチルドレンシリーズ(小説/2011~)
45. 辻村深月『限定愛蔵版  冷たい校舎の時は止まる』(小説/2019)
46. 井上悠宇『誰も死なないミステリーを君に』(小説/2018)
47. 古宮九時『純真を歌え、トラヴィアータ』(小説/2018)
48. 吉野万理子『想い出あずかります』(小説/2011)
49. 咲間十重『まつりの夜、ぼくたちは。』(小説/2018)
50. 綾崎隼 君と時計シリーズ(小説/2015~)
51. 三秋縋『君の話』(小説/2018)
52. 『探偵が早すぎる』(ドラマ/2018)
53. 赤川次郎『卒業式は真夜中に』(小説/2008)
54. 額賀澪『風に恋う』(小説/2018)
55. 湊かなえ『未来』(小説/2018)
56. 綾崎隼 レッドスワンシリーズ(小説/2015~)
57. 有間カオル『アルケミストの不思議な家』(小説/2018)
58. 相沢沙呼小説の神様』(小説/2016)
59. 佐野徹夜『アオハル・ポイント』(小説/2018)
60. 瀬川コウ 君と放課後リスタートシリーズ(小説/2018~)
61. 綾崎隼『盤上に君はもういない』(小説/2020)
62. 雷句誠『金色のガッシュ!!』(漫画/2001~2008)
63. 朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』(エッセイ/2017)
64. 菊川あすか『はじまりと終わりをつなぐ週末』(小説/2018)
65. loundraw『イミテーションと極彩色のグレー』(小説/2019)
66. 森見登美彦『熱帯』(小説/2018)
67. 住野よる『麦本三歩の好きなもの』(小説/2019)
68. 夕鷺かのう『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』(小説/2019)
69. 浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』(小説/2019)
70. メンタリストDaiGo『最短の時間で最大の効果を手に入れる 超効率勉強法』(自己啓発/2019)
71. 有栖川有栖『月光ゲーム』(小説/1994)
72. 高畑京一郎タイムリープ あしたはきのう』(小説/1999)
73. 有川浩 図書館戦争シリーズ(小説/2006~2008)
74. 乙一『夏と花火と私の死体』(小説/1996)
75. 北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』(小説/2015)
76. 柴村仁『プシュケの涙』(小説/2009)
77. 『秒速5センチメートル』(映画/2007)
78. 斜線堂有紀『不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語』(小説/2019)
79. 知念実希人『ムゲンのi』(小説/2019)
80. 藤石波矢,辻堂ゆめ『昨夜は殺れたかも』(小説/2019)
81. 米澤穂信 古典部シリーズ(小説/2001~)
82. 五十嵐貴久 リカシリーズ(小説/2002~)
83. 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』(小説/1992)
84. 青崎有吾 裏染天馬シリーズ(小説/2012~)
85. 斜線堂有紀『恋に至る病』(小説/2020)
86. 『FINAL FANTASY XIII』(ゲーム/2009)
87. 知念実希人『レフトハンド・ブラザーフッド』(小説/2019)
88. 菊川あすか『君がくれた最後のピース』(小説/2021)
89. 相沢沙呼 城塚翡翠シリーズ(小説/2019)
90. 伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(小説/2020)
91. 朝永理人『幽霊たちの不在証明』(小説/2020)
92. 喜友名トト『リバーシブル・ラブ ー初恋解離ー』(小説/2019)
93. 逸木裕『銀色の国』(小説/2020)
94. 似鳥鶏,相沢沙呼,梓崎優,市井豊,鵜林伸也『放課後探偵団』(アンソロジー/2010)
95. 浅倉秋成『九度目の十八歳を迎えた君と』(小説/2019)
96. 『ジョゼと虎と魚たち』(映画/2020)
97. 古宮九時『彼女は僕の「顔」を知らない。』(小説/2021)
98. 似鳥鶏 市立高校シリーズ(小説/2007~)
99. 浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(小説/2021)
100. 市井豊 聴き屋シリーズ(小説/2012~)

 

 

 

1. 結城浩 数学ガールシリーズ(小説兼参考書/2007~)

せっかくの機会なので、最初は数学ガール。分類が独特なのは、どちらに帰属するか迷った末に、わからないからどっちも書いてしまえとなった結果である。大学受験時代に存在を知り、受験後に読み漁った。また、かなりハイレベルな内容まで扱っているため、大学在学中にも大変お世話になった。テトラちゃんの恋の行方が気になるので、続刊をずっと待ち望んでいる。

ちなみに数学ガールをトップバッターに持ってきたことには意図がある。普段「なんで読書するようになったの?」と聞かれた際には、次に出てくる『君の名は。』が面白かったからだと答えている。細かく説明すると長くなるためそう答えているのだが、『君の名は。』を書店で手に取ることができた理由を作り上げた本がそれ以前に存在する。数学ガールはその一端を担っているため、これを機にトップに持ってきてみた。このあたりの話は機会があれば別記事にまとめようと思う。

 


2. 新海誠君の名は。』(小説/2016)

あの頃、テレビで予告が流れていて「面白そう!絶対観に行く!」と家族の前で言っていたことを、今でも覚えている。そしてある日、この作品の監督が映画公開前に小説にして出版するという話を聞いて、発売してすぐ書店に駆け込んだ。これまで、巷で小説と言われているようなものは『そして誰もいなくなった』くらいしか読破したことがなかった。児童書コーナーにある、短編集の一編を一冊の単行本にしました系の本は数冊読み切ったことがあったが、それでも数冊。そんな人間が大学の帰りに書店で買って電車の中で読み、家に帰ってもほかのことをせずに最後まで読み切った。あの時、この作品自体がとても面白いということ以外に、「ずっと避けてきたけど、実は読書できるのでは?」という思いが心の中に芽生えた。この本がなかったら今の生活はなかったと言っても過言ではない。

 

 

3. 河野裕 階段島シリーズ(小説/2014~2019)

君の名は。』の次に買った本。今話題の作品も、有名な著者も、何もわからなかった。平積みされている本の中から三冊ほど買って帰ったように思う。その中の一冊。この時に本を選んだ基準は「表紙が好き」「分厚くない」「シリーズものではない」である。もう一度言う。「シリーズものではない」が選定基準である。読書初心者の私は「シリーズものというのは、○○○○1、○○○○2となっている」ということが当然だと思っていた。だってシリーズだもの。幸か不幸か、この時の私に『いなくなれ、群青』がシリーズ第一巻であり、近くにあった『その白さえ嘘だとしても』が第二巻だと思う知能はなかった。裏表紙には”階段島シリーズ開幕”って書いてあるのに......。素敵な本に出会えたのだから結果オーライではある。完結してから読み返していないから、そろそろ読み返そうかな。『いなくなれ、群青』『きみの世界に、青が鳴る』の二冊はサイン本を持っている。大切で大好きなシリーズ。ここから"表紙買い"する生活が始まった。

 

 

4. 七月隆文ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(小説/2014)

友達から薦められて買ったのだと思う。家族旅行の時に読んでいて、花火の待ち時間がやけに長くて、先が気になってしまって、一人だけ建物の中に入って明るいところで読んでいた。帰りの電車で読み終わったのだけれど、外だし家族の前だしということで、涙をこらえるのに必死だった想い出。読書で初めて泣いたのはたぶんこの本。

 

 

5. 五十嵐雄策『七日間の幽霊、八日目の彼女』(小説/2016)

表紙買いした本。最近は大きな書店で買うことが多いのだけれど、これは地元の小さな書店で買ったのを覚えている。「これだけは忘れないで。おにぃの傍にいてくれたのがだれなのか。この四年間、ずっとささえてくれたのがだれなのか。それはきっとおにぃにとって大切なことになるはずだから」という主人公に向けた妹の言葉が強く心に残っている。

 

 

6. 織守きょうや『記憶屋』(小説/2015)

人の記憶を消すことができる記憶屋。その記憶屋を探す物語。「記憶を消してもらうことは悪いことなのだろうか。それとも良いことなのだろうか」物語の中でもこの類の問いかけは存在して、この本を読んで以降、ふとした時にその問いに考えを巡らせていることがある。この問いはこれからもずっと頭のどこかにあって、頭の隅っこのほうにあるその問いを時々引っ張り出してきて、自分に問うていくのだろうと思う。ちなみに『記憶屋』と書いたが、正確にはシリーズものである。ただ個人的には『記憶屋』の終わり方がとても綺麗で、「これは二巻にどうやって繋げていくのだろうか?」と思ったことを覚えている。シリーズを通した終わり方よりも、一巻だけの終わり方のほうが好みだったため、シリーズとしては表記しないことにした。また、loundrawというイラストレーターの存在を知った作品である。

 

 

7. 霧友正規『僕はまた、君にさよならの数を見る』(小説/2016)

"気がついたら何ページも何ページもめくっていた”ビブリアを見返したところ、2016年の私がそう書いていた。そして、"友達の「読み始めたら一日で読み終わらないと気が済まない」という言葉に触発されて一日で読み切った"とも。この友人とは今でも交流がある。最近は忙しくて本を読めていないみたいだが、ご飯に行ったり、たまに遊びに行ったりする数少ない大切な友人である。この本は表紙買いというよりもタイトル買いである。それくらいタイトルが気に入っている。今読んでいる本よりも少し前に読んだ本と同じ単語や表現が、今の本にも出てきている!という驚きは今でも感じるのだが、この本はその驚きに初めて出会った本でもある。

 

 

8. J.K.ローリング ハリーポッターシリーズ(小説/1999~2008)

小学生の頃、朝読書という時間があった。毎週水曜日の朝15分くらいだろうか。席に座って読書をするというものだ。当時、なんの本を読めばいいかわからなかった私は家族に聞くことにした。聞けば、家族は口をそろえて「ハリーポッターがいいと思う」と言った。あの重い本をランドセルに入れて登校する。読書好きでもない小学生がたった15分で読めるページ数なんてたかが知れている。加えて、当時は朝読書という時間があるから読んでいたのであって、本に興味があるから読んでいたわけではない。そんな小学生がたどり着く結末は想像に難くないだろう。水曜日の朝になると本を開く。すると先週の内容を覚えていないのだ。覚えていないのだから最初から読む。翌週になる。覚えていない。もう一度読む。翌週になる。覚えていない。もう一度読む........。こうして私は読書が嫌いになった。今だから言えることだが、学校も親も、世の中で良しとされているからという理由で、本人の興味がないものを子どもに押し付けてはいけない。興味があれば自発的にやるし、興味がなければ無理やりやらせたところで、身につかないし続かない。身をもって証明したのだから間違いない。

 

 

9. 三秋縋『君が電話をかけていた場所』『僕が電話をかけていた場所』(小説/2015)

初めて触れた三秋縋作品。私はこの記事を書くにあたって、読書記録を見返していたが意外だと思った。この作品が最初だったのか....と。もう読んだのはずいぶんと前で、正直に言えば内容が頭に残っていない。ただし、「ああ、これは面白い。こんな物語があるのか...すごいな.....」と感じたことは今でも覚えている。ここから三秋縋という小説家を追いかけるようになった。世の中に次々出てくる新刊や手に取ってしまう既刊によって実現できていないが、再読したいと思い続けている作品。

 

 

10. 住野よる『きみの膵臓をたべたい』(小説/2015)

これはあるあるだと勝手に思っているのだが、書店で平積みになっているのを見かけて以来「佐野よる」という著者の作品だと思っていた。ごめんなさい。ピンク色の明るい表紙に対して、なんともグロテスク感漂うタイトル。このタイトルに惹かれず、そしてイラストレーターがloundrawだということにも気づかず、買っていなかった。そんなある日、中学の同級生とご飯を食べていると「ある小説が面白いから読んでほしい」と言われ、後日勝手にポストインされていたのが本作だった。「ポストに入れといたから」と言われ、取り出して確認した時の私の感想は覚えていない。しかし、想像するならば「やってしまった...」だろう。タイトルが不気味で避けていた本。けれど友人がポストに入れてくれたおすすめの本。気が進まないが読むしかない状況に追い込まれたと言っていい。しかし、それが結果としては大正解。その友人には感謝するしかない。グロテスクな内容では無かったし、非常に好みの作品であった。この後、友人には本を返却し、自分で購入。のちに文庫化した際に文庫版も購入した。もちろん実写映画もアニメ映画も劇場へ足を運んだ。と思っているのだが、いまこの文章を書いていて、思ったことがある。「本当に私は友人にこの本を返しただろうか................」。

 

 

11. 河野裕 サクラダリセットシリーズ(小説/2009~2012)

出会ったのは大学近くの書店。この頃は表紙買いすることが主で、面陳されていた爽やかな青色の表紙に目を奪われた。近くにあったポップを読む限り、どうやら既に完結している作品のようだ。角川スニーカー文庫から出ていたそれを、角川文庫で改めて出版する。そして毎月1冊刊行だという。なぜだか、その時点で毎月買う気になっており、目の前の青い表紙を1冊手に取ってレジに持って行った。この作品に出会って以来、能力ものを書かせたら河野裕の右に出るものはいないと思っている。また、この緻密なストーリー構成を組める著者は天才だとも思っている。この物語の主人公は"常に冷静であり、焦りや恋心といったものを含め、それらを表に出してこない"タイプの人物だと認識している。無感情ではないのだが、そういった感情を押し出さず、外から見るといたって冷静に見える。そんなキャラクターが好きだと自覚した作品でもある。自分で物語を空想するときは、決まってそんなキャラクターが最初に登場する。

 

 

12. 森見登美彦『夜行』(小説/2016)

表紙に惹かれて買った作品。森見さんの文体は正直苦手である。それがわかっていても買ってしまう表紙とあらすじ...。何度も負けた気がする。そして、自分には難解で一読で理解できた試しがないのが森見作品。その中でもまだ読みやすかったが、完璧に理解するには至っていない作品。でも、この物語の情景が忘れられず、いつかもう一度読んでみたいと思っている。

 

13. 住野よる『よるのばけもの』(小説/2016)

『君の膵臓をたべたい』だけ読んで終わっている人が多いのではないだろうか。発売当時に読んで、その時の記録に「よかったよこの本」と書いてあった。つい最近読み直す機会があったのだが、正直内容は忘れていて、この本がどうよかったのかわからなかった。再読してわかった。ストーリーが抜群に面白いとか、想像もできないトリックがあるとかそういった類ではなかった。けれど「この本はいい本だと思える感性が今も自分にあってよかったと思った」というのが再読時の感想である。大人になればなるほど刺さる物語だと思うので、学校なんてもう卒業したよ。学校って楽しいこともあるかもだけど、そんないいことばっかりじゃないよね。と思う大人の方々にぜひ読んでいただきたい作品。

 

14. 『サマーゴースト』(映画/2021)

loundraw。ずっと大好きで追い続けているイラストレーター。そのloundrawが脚本を担当した映画である。小説家の乙一が担当した原作小説も存在する。そちらもいいが、ぜひ映像を観ていただきたい。常に迷い、悩み続けてはいるのだが、「この先どうやって生きていこうか」「このままでいいのだろうか」「本当ににやりたいことってなんだったのだろうか」という疑問を自分自身に投げかけていた時期に出会った作品である。そのため、予告編で流れる「君は本当はどうしたいの?」「心のずっとずっと奥で願うの。君はどこへいきたい?」というセリフが何度も頭の中を駆け巡った。そしてそれらのセリフをずっと覚えている。これからも覚えているのだろう。定期的に観返すのだと思う。そして自分の人生への問いかけをやめることなく生きていくのだと思う。そのためにいつまでも手元に置いておきたい作品。

 

15. J.K.ROWLING『FANTASTIC BEAST AND WHERE TO FIND THEM  THE ORIGINAL SCREENPLAY』(台本/2016)

唯一といっても過言ではない洋書。Screenplayということで、本作品は脚本である。そのため洋書とはいっても、語数が多いわけでもないので、そこまで読み通すのは大変ではない。電子辞書とスマホを駆使して読み切った記憶がある。電子辞書で出てこなかった単語をスマホで調べたら"闇払い"だったなんてこともある。気に入っていたのだが、ファンタスティックビーストの2作目までしか、これと同形態で発売されていないようで、3作目以降は読んでいない。

 

16. 『水族館ガール』(ドラマ/2016)

水族館という場所が好きだ。あの生き物を見たいとか、海の生物に詳しいとか、そういったことはほとんどないのだが、ただただあの空間が好きだ。そんな水族館で働く新人職員の成長と、生き物の生態を描いたドラマである。当時好きだった人が、この作品をおすすめしてくれた。ドはまりしてしまい、泣いたシーンもいくつもある。円盤化をずっと待ち続けている作品。

 

17. 夏川草介『本を守ろうとする猫の話』(小説/2017)

当時、結構話題になったのではなかったか。茶色と青の表紙か印象的。読書が好きな人の界隈にいたため、"本を守ろうとする~”というタイトルの時点で多くの人が手に取っていたように思う。もう一度読みたいと思いながら、再読に至っていない作品。文庫化していたが、単行本のほうが好きな印象。同著者の『神様のカルテ』もいつか読んでみたい。

 

18. アガサ・クリスティーそして誰もいなくなった』(小説/1939)

大学二年の頃から読書をするようになった。それ以前にしっかり読み切った本は?と聞かれたときに唯一上がる作品が『そして誰もいなくなった』である。当時、教室の一番後ろの席で自分のロッカーが席の真後ろにあったため、授業中にそこから本を取り出して、授業そっちのけで読み進めていた記憶がある。大学二年より前で、こんなに本にハマったのは後にも先にもこの時だけだ。あの頃に読んで以来、再読ができていない。そろそろしてもいい頃だろうか。それとも、面白かったというあの頃の記憶のまま保持しておくべきだろうか。

 

19. 河野裕『最良の嘘の最後のひと言』(小説/2017)

"年収8000万円で超能力者を募集する"。発売当時、そんな帯や宣伝文句が使われていたはずだ。その一文だけで、絶対面白いと判断した自分の目に狂いはなかった。同著者の作品はどれも大好きである。そして能力系の話を書かせたらこの人の右に出る者はいないというのは前述の通りである。そんな人が書く能力系の新作長編。楽しみで仕方がなかった。この本を読んだ日は高校の同窓会で、同窓会が終わり帰宅し、明け方まで本をめくっていた気がする。寝ることよりも、この本を読み切るのが先だというすごく幸せな読書体験だった。

 

20. 佐野徹夜君は月夜に光り輝く』(小説/2017)

ものすごく大好きな表紙に惹かれて買ったこの作品。この表紙が忘れらず、そして物語の内容も忘れられない。この本に出会ったことで、佐野徹夜という作家を追うことになる。発光病という病気を題材にした難病ものの作品。エピローグ前の最後の一文が忘れられない。ちなみに実写映画も存在する。そちらも大変気に入っている。主題歌はSEKAI NO OWARIの『蜜の月』。

 

21. 浜口倫太郎『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』(小説/2017)

藤原竜也が好きだ。藤原竜也が主演で実写化するぞ、という情報を聞きつけて、映画公開よりも先に小説を手にとった。『最良の嘘の最後のひと言』以来のページをめくる手が止まらないという感覚を抱いた作品。残念ながら小説を読み返すことは叶っていないが、実写映画は公開時に観に行き、その後2回ほど観返したと思う。実写映画の完成度も素晴らしいので、ぜひどちらからでも、どちらかだけでも楽しんでいただきたい。

 

22. ピーター・ブラウン他『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(自己啓発/2016)

みなさん、勉強法の本は読むだろうか。私は大学自体にそこそこ読み漁ったように思う。その中でもおすすめの勉強法の本は二冊で、そのうちの一冊。多くの人が小さい頃から信じてやってきた勉強法。小学校の頃に親や先生が「こうやりなさい」と言ってきた勉強法。それらにおいて「正しくないよそんなもの」と科学的なデータを示しながら進んでいく。"勉強法の本"とわかりやすく言ったものの、仕事全般や趣味の上達にも応用できそうな内容だと思う。小説以外の本は一切読まないといった方はとっつきにくいかもしれないが、一読の価値あり。

 

23. 古野まほろ『時を壊した彼女  7月7日は7度ある』(小説/2019)

第一印象=めちゃくちゃ分厚い。こんなの読めっこないと思って、それでも表紙やSNSの口コミに誘われて手に取った。分厚い×二段組みという個人的には受け付けないコンビの作品。SFちっくな面も少しあり、そこもSFが苦手な自分にはネックだった。それでも買った自分、読み始めた自分に感謝したい。数十ページを過ぎるころには、どんどん先に進みたくなり、ページを無意識にめくり続けていた。こんなに分厚いのが信じられないくらい早く読み終わったように思う。もう一度読みたい。そして、ずっと文庫化を待ち望んでいる。(さすがに分厚くて再読の手が伸びないのだ...。)

 

24. 宿野かほる『ルビンの壺が割れた』(小説/2017)

あまりSNSで嫌いな作品については触れないようにしているが、今回は触れようと思う。読書好きの方ならば、この本を知っているのではないだろうか。発売前の段階でSNS上で恐ろしいほど話題になり、書籍発売前に全文公開という手段がとられたこの作品。私は件の全文公開時にWeb上で全文を読んだ。はっきりと言うが、意味が分からなかった。この本が話題になっていることも、この本が出版されることも理解できなかった。確かに斬新な形態ではあったが、ただそれだけだなと思った。話題になっている理由も、割と多くある高評価のレビューも全く理解できていない作品。再読する気もないし、Web上で読んでつまらなかったため本を購入してすらいない。この本の面白さを教えてやるぜという方、お待ちしております。

 

25. 荒川弘鋼の錬金術師』(漫画/2002~2010)

もはや語るまでもない名作。名言名シーン盛りだくさんの大好きな漫画。この度新居に越したのだが、新居にも当たり前のように持ってきたため、数年ぶりに読み返したいと思う。

 

26. 『LIAR GAME』(ドラマ/2007(シーズン1) 2009~2010(シーズン2))

大好きなドラマシリーズ。そもそもあまりドラマを観ないのだが、この作品はハマりにハマって何度も観ていた。頭を使うゲームが題材というのも自分がハマった大きいところではある。戸田恵梨香松田翔太のコンビが最高。映画もあり、そちらもおすすめである。シーズン2を本当に久しく観ていないので、そろそろ観たいところ。なんならDVDを買ってもよい。

 

27. 『TRICK』(ドラマ,映画/2000~2014)

あまりドラマを観ないと項番26で言ったくせに、またドラマである。人生で一番観ているドラマだと思う。セリフを言えるシーンがあるどころか、多くの部分でセリフが言えるレベルだと思う。いつまでも終わってほしくなかったドラマであるが、劇場版ラストステージの終わり方が素晴らしすぎたため、続編を望んでいないという葛藤がある。今でもよく見返すし、なぜDVDを持っていないのだ?というレベルで好きな作品である。

 

28. loundraw『Hello,light ~loundraw art works~』(画集/2016)

記憶が間違っていなければ人生で初めて買った画集。loundrawというイラストレーターは知っていた。今はほとんど表紙を担当していないが、当時はloundrawが表紙を担当していた本がたくさんあった。たくさんあったこともそうだし、当時は自分が有名な作品や有名な著者をほとんど知らなかったため表紙買いしていたこともあり、loundrawのイラストとは本の表紙で出会うことが多かった。好きなイラストだったので、Amazonでloundrawと検索してみて画集が出ていることを知り、購入したのを覚えている。この画集を通して小説を買ったこともある。大切な一冊。

 

29. 河野裕/河端ジュン一『bell』(小説/2014~)

3D小説というものをご存じだろうか。視聴者参加型のWeb小説とでも言えばいいだろうか。知った時には既に参加時期は終わっており、とても残念に思った。今なお、ネット上で小説自体を読むことはできる。だが、視聴者の行動によって展開が変わるなんて夢みたいじゃないか。参加時期は終わっていると書いたが、物語自体の完結はまだしておらず、いつまでも再開を望んでいる。本書はその3D小説bellの一部を書籍化したものである。面白いのは間違いないが、やはり3D小説の醍醐味を堪能してみたいという気持ちがあるので、3D小説の再始動を強く望む。

 

30. 小坂流加『余命10年』(小説/2007)

「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯生きてみるよ。」そんな言葉が強く印象に残っている。今こうして生きていることが当たり前ではない。好きなことができるのも、嫌なことが起きるのも、それはとても素敵なことで、適当に生きることは許されない。あなたが適当に生きた一日は、どこかの誰かが全てをなげうってでも、なんとしても手に入れたかった一日かもしれないのだから。そんなことを考えさせてくれる作品。再読ができていないが、手元に置いておきたい作品。

 

31. 高田由紀子『青いスタートライン』(小説/2017)

文字の大きさからして、小説と児童書の間に分類されるのだろうか。挿絵もあるし、児童書寄りの本だと思う。早いか遅いか、上手くいくかいかないか、それはもちろん大切だけど、「自分がやると決めたこと、やりたいと思ったことに向かって全力で走っていく姿」というのはこれ以上ないくらいにかっこよくて輝いて見えるのだと教えてくれる作品。子どもの頃に出会いたかった。

 

32. 辻村深月かがみの孤城』(小説/2017)

「著者最高傑作」そう帯に書かれていた。大学二年から本を読み始めたものの、昔から本を読むのが好きじゃなかった私は、この本の分厚さに圧倒されていた。書店で大々的に売り出されているのを見かけても、その分厚さを前に買うのを躊躇っていた。今思えば、なぜ購入に踏み切れたのかは覚えていない。買うまでに時間がかかり、買って帰ってから読み始めるまでにも時間がかかったことは確かだ。しかし、濃密な読書体験だった。最後の最後まで、仕掛けられたトリックに驚かされ、こんなに分厚い本なのに読み切るのはあっという間だった。これが辻村深月という著者に出会った作品であり、分厚い本への抵抗が少しだけ薄れた作品である。文庫も持っているが、やはり単行本の装丁が素敵。サイン本を手に入れたり、サイン本を贈ったり、色んな思い出がある作品。

 

33. 知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』(小説/2017)

鮮明に覚えている。げみさんと知念さんのWサイン会。表紙がものすごく素敵で、著者とイラストレーター両方のサインがもらえる&別イラストのカバーももらえるということに惹かれて購入を決めた作品。初知念実希人作品であり、初めて知念さん、げみさんにお会いしたきっかけの作品。最後まで飽きることなく読み切ることができた。このサイン会の日、『崩れる脳を抱きしめて』以外の作品もサインをもらうことができたのだが、初めて読む著者の作品ということもあり、ほかの書籍は買わなかったことを後悔している。

 

34. げみ『げみ作品集』(画集/2016)

先述の知念さんとげみさんのWサイン会にて購入した作品。本書の存在は知っていたのだが、当時学生であり、あまりお金もなく、小説にひたすらお金を使っていたため画集に割くお金がなく、買いたいと思いながらずっと先延ばしにしていた。サインをもらえるこの機会に!と思い購入に踏み切った。やはり購入して間違いなかった。今も毎年個展に足を運ぶくらい好きなイラストレーターの初作品集。

 

35. 森沢明夫『たまちゃんのおつかい便』(小説/2016)

”裕福と幸福は違う”この本を見た時に頭をよぎる言葉。一日三食たべる。帰る家がある。季節ごとに着る服がある。それらを満たすために最低限のお金は必要だろう。だけど、最低限を満たしたあとは、お金ではなく人間関係だということを教えてくれた。お金持ちではないけれど、自分のことを応援してくれる人がいる、自分がしたことで笑ってくれる人がいる。それだけのことかもしれない。でも、それだけのことでお金持ちになれなくたって、幸せになれる。そんなメッセージが込められた大好きな作品。

 

36. 河野裕 架見崎シリーズ(小説/2017~)

ここの文章を書いている今日は2023/8/16。このシリーズの8巻が出るのは約2週間後。毎度楽しみにしているシリーズ。架見崎という街の住人となり、能力を駆使して生活していく。架見崎という街のルール、香屋という少年のルールを逆手に取ったような思考回路。それだけでも十分に面白いのに、他プレイヤーの能力や巻数が進むにつれて判明していく架見崎の隠された側面。どんどん面白くなっていくこの物語に永遠に浸っていたいと思うほどに、最高の能力系小説。絶対にハマる。まずは1巻を手に取ってみていただきたい。

 

37. 宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(小説/2017)

人生で800冊以上の本を読んできた。その中で泣いた本はいくつもあるが、この本が人生で一番泣いた本だと思う。こんなに泣けてしまう本があるだろうか。こんなに泣いてしまうほど感動できる本であり、気に入っている本なのだが、いかんせんこの本が持っている力が強すぎるために再読に踏み切れずにいる。気分が落ちてしまう、泣きまくってしまう。そういう覚悟をもっていずれ再読に臨みたい。

 

38. 『バテンカイトス  終わらない翼と失われた海』(ゲーム/2003)

人生で一番ハマったゲーム。ゲームキューブRPGソフトで、2枚組で発売された。プレイヤーは主人公カラスに憑く精霊という立場でゲームが進んでゆく。世間では神ゲーという声がある一方で、そもそもマイナーで知っている人が少ないゲーム、ゲームテンポが悪いといった声もある。そんなゲームが2023/9にリマスターされるようで、すでに予約済みで大変楽しみにしている。本作とは別に『バテンカイトスⅡ 始まりの翼と神々の嗣子』という作品も出ている。こちらも同じくゲームキューブで、1作目の20年前を舞台とする作品である。2023/9にSwitchで発売されるリマスターはⅠ&Ⅱリマスターということで、どちらも楽しめるようになっている。Ⅱも好きな自分としては贅沢なリマスターであり、久しぶりにゲームをやり込む時期が到来しそうな予感。

 

39. 『空の青さを知る人よ』(映画/2019)

さっきから"人生で一番"というワードを連発している気がするが、こちらは人生で一番映画館に観に行った映画。上映期間中に4回劇場に足を運び、DVDも持っている。しかし、人によっては「そのシーン意味わからない」となる可能性がある作品であるとも思っている。アニメーション映画ということもあり、万人に勧めるわけではないが、気になる方はぜひ。原作小説も存在するが、映画がおすすめ。

 

40. 王城夕紀『青の数学』(小説/2016)

数学が好きだ。ただそれだけの理由でこの本を手に取った。自分が触れてきた数学の世界とは全く違うレベルの数学が繰り広げられていた。数学を題材にした物語であることも、扱われている数学が学生生活では出会わないようなものであったことも、自分の好みに当てはまった。第二巻も存在するが、一巻の本書のほうが好き。

 

41. 沖田円『きみに届け。はじまりの歌』(小説/2017)

正直に言うが、内容をあまり覚えていない。音楽を題材にしていた物語であり、夢を追いかける女の子が主人公だったはず。音楽×夢という時点で自分の好みにドンピシャ。かつ、スターツということもあり読みやすかったのだと思う。大好きな本だと認識しているので、そろそろ読み直したい。

 

42. 有川浩『キケン』(小説/2010)

好きな青春小説は?と聞かれたら、間違いなくこの本を挙げるだろう。大学の学祭を題材にした、青春も青春、ど青春な物語である。こんな大学生活を送ることができたら最高に楽しいだろうなと何度も思う。少し前に読み返したが、今もうすでに読み返したい気持ちに駆られている。青春といえばこれ。夏といえばこれ。そんな小説が有川浩の『キケン』。

 

43. 知念実希人 天久鷹央シリーズ(小説/2014~)

知念さんとげみさんのWサイン会の時に見かけていたが買わなかった。買わなかった理由は「表紙に抵抗があったから」。今となっては、かわいいキャラクターが表紙になっていたとしてもあまり抵抗が無いのだが、このときは気にしていた。どこかのタイミングで勇気を出して一冊目を購入。結果どハマり。面白すぎてあっという間に既刊を読んでしまい、新刊が出るのを毎度楽しみにしている。著者の執筆速度が速いので、割と期間が空くことなく続刊が出てくるのでありがたい。10月にも新刊が出る。また、完全版が出るようなので、大変楽しみにしている。ただし、実業之日本社からの出版のようで、新潮nex推しの私としてはちょっと複雑。

 

44. 綾崎隼 ノーブルチルドレンシリーズ(小説/2011~)

「ノーブルチルドレンっていうシリーズが面白いよ」。ある時フォロワーの方から、そう言われた。その方には感謝しかない。その一言が、本シリーズを読み、綾崎隼という小説家にハマっていくきっかけとなった。いまとなっては綾崎隼という小説家は大好きな小説家の一人である。そんなきっかけをつくってくれたシリーズ。テンポもよく、キャラもそれぞれ個性があり非常に読みやすい。(読みやすさにはメディアワークス文庫というのも一役買っている。)物語としては2013年刊行時点で綺麗な終わり方をしてるのだが、2018年に新刊が出たということで、期間は2011~としている。

 

45. 辻村深月『限定愛蔵版  冷たい校舎の時は止まる』(小説/2019)

辻村深月好きのフォロワーの方がいて、その方にお勧めしていただいたのが『冷たい校舎の時は止まる』だった。夢中で上下巻を読んだ記憶がある。その本の愛蔵版。この愛蔵版が届いたときに写真を撮ってSNSに挙げたところ、なぜかかなり多くの反応をいただき驚いた。残念ながら、上下二段組の本かつ、文庫では上下巻になっているものを単行本一冊にまとめている分厚さという点で読むには至っていないが、装丁がものすごく綺麗で、機会があれば手に取っていただきたい。SNSに大量反応記念でもう一冊買ったため、二冊持っている。また、お勧めしてくれた方からは他にもたくさん辻村作品をお勧めしてもらっているので全て読めるよう頑張りたい。

 

46. 井上悠宇『誰も死なないミステリーを君に』(小説/2018)

ミステリーと言えば人が死ぬ。そんな固定観念を消し去るようなタイトル。近いうちに死ぬ人がわかる能力を持った少女とバディを組み、その人を死の運命から遠ざけていく少年のお話。なるほど題材をこうすれば人が死ななくてもミステリーを書けるのか!と思わされたし、かつ読みやすく面白い作品。この方の作品はほかにも色々あり、どれも"あまり見かけない設定"だと思って読ませていただいている。

 

47. 古宮九時『純真を歌え、トラヴィアータ』(小説/2018)

今でも覚えている。就活に行き詰まって割と絶望していた時期にこの本を読んでいた。頑張っていた歌において、自分の才能のなさを自覚し夢破れる少女を主人公にした作品である。どう考えても就活に行き詰まって絶望している人間が読む本ではない。でもこの本をそのタイミングで読んでいたおかげで得たものもある大事な一冊。コミケに持参してサインもいただいた。

 

48. 吉野万理子『想い出あずかります』(小説/2011)

質屋というものを知っているだろうか。なにか物を入れる代わりにお金を得られるお店である。この物語の舞台は魔女が営む質屋。ただし、この質屋に入れることができるのは物ではなく記憶である。そして子どもにしか訪れることが許されない。そんな質屋を舞台にしたこの作品は記憶の大切さを教えてくれる。何度でも読み返せるように手元に置いておきたい一冊。子どもよりも大人に読んでいただきたい。

 

49. 咲間十重『まつりの夜、ぼくたちは。』(小説/2018)

絶対に大好きな本だったはず、という思いがずっとある。あるフォロワーの方に演劇の台本を朗読してもらったことがあり、なぜかその台本と本書の記憶がシンクロしている。断っておくが、その台本が本書の内容と酷似しているとかではない。自分の記憶の中のこの物語の情景と、朗読してもらった台本の情景がなぜか重なっているというだけである。再読して記憶を確かなものにしたいと思いつつ、まだ叶っていないのでそろそろ。

 

50. 綾崎隼 君と時計シリーズ(小説/2015~)

タイムリープを題材にした物語は現代に山ほどある。この題材は比較的好きなので、色々と読むのだが、中でも大好きなのがこのシリーズである。全四巻、本当にあっという間に読み切ることができる。片思いをしている女の子が死ぬたびに時が戻る。そういう軸で創られた物語であるが、四冊のいずれにも多彩な仕掛けがあり、ただそれだけの物語で終わらない。何度も読み返す、綾崎隼作品の中でも一二を争うレベルで好きな作品。

 

51. 三秋縋『君の話』(小説/2018)

ものすごく「三秋縋らしい作品」である。こういうものを題材にするのは三秋縋しかいないのではないか、三秋作品を読むと毎度そういう気持ちが湧いてくる。”僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した”こういう訳のわからない文章が三秋縋という感じがする。この一文に心が動いた人は読んでみることをお勧めする。夏らしい一作。

 

52. 『探偵が早すぎる』(ドラマ/2018)

「トリック返し」そんな決め台詞を持つ、事件を未然に防ぐ探偵の話。探偵役は滝藤賢一。もう、いい味出しまくりで最高な配役だった。井上真偽原作なので、トリック自体はもちろん秀逸。そこに滝藤さんの演じるキャラによる笑いも起こる、大変面白いドラマだった。DVD-BOXは変えていないのだがいずれ。原作も読んだが、個人的にはドラマのほうが好き。

 

53. 赤川次郎『卒業式は真夜中に』(小説/2008)

卒業式の後、誰もいない教室で見つけた携帯。中を見ると「あんな奴を放っちゃおけない。私たちの手で殺さなきゃ。今夜11時に学校で」と書かれているメールがあった。その一通のメールを起点に人生が変わり始める。そんなあらすじに惹かれて手に取った一冊。著者は誰もが知っている赤川次郎。人生初の赤川次郎作品だった。赤川次郎作品は文体、一文一文の短さといった点で非常に読みやすい。読書をあまりしたことがない人にもお勧めしたい作家のひとり。

 

54. 額賀澪『風に恋う』(小説/2018)

吹奏楽のお話。結末が大変好みで、額賀澪作品の中で断トツのトップ。やはり「なにかに向かって頑張る姿を描いた作品」というのが、小説でもアニメでも映画でも、私の好みなのだと思う。あー、読み直したい。大事なのでもう一度書くが、結末がめちゃくちゃ好み。

 

55. 湊かなえ『未来』(小説/2018)

もう一度読むことはないであろう作品。基本的に暗い作品はあまり好みではない。でもなぜか、暗い作品ではあるがページをめくる手は止まらなかった。ページをめくりながら、物語につられて、どんどん沈んでいく心を感じながら読んだ。ちなみに装丁が好きなので、文庫より単行本派。

 

56. 綾崎隼 レッドスワンシリーズ(小説/2015~)

小学校から中学校までサッカーをやっていた。そのおかげもあってかサクサク読めた。大好きなシリーズなのだが、売れ行きはあまり芳しくないよう...。『世界で一番かわいそうな私たち』という同著者/別シリーズの本があるのだが、そちらのサイン会に参加した時に「レッドスワンの新刊いつまでも待ってます!」と伝えた。あの時に強く手を握っていただいたことは忘れません。その後二冊の新刊が出た。まだ先のストーリー構想はできているみたいなので、いつまでもいつまでも新刊を待ちたい。

 

57. 有間カオル『アルケミストの不思議な家』(小説/2018)

何かに絶望したとしても、きっと助けてくれる人がいる。気づいてくれる人がいる。死にたくなったとしても少しだけ立ち止まってほしい。死を受け入れる勇気のうち、ほんの少しだけでいいから助けを求めるために使うことができたら。そうすれば助けてくれる人はきっといるんだから。そんなことを教えてくれる、いつまでも寄り添ってくれる大切な作品。

 

58. 相沢沙呼小説の神様』(小説/2016)

”あなたは小説が好きですか?”そんな一文を中心に置いて創られた物語。読後にその問いかけを自分に対して行う。その問いに対する答えは人それぞれだろう。願いも絶望も優しさも悲しさも、ひとつひとつ丁寧に綴ることで初めて世界をもつのが"小説"という媒体。その小説がもつ世界に宿る、色、音、香り、輝き、それらが誰か一人の心にでも届いたなら、どんな形でも届いたなら、その小説は生まれてきた価値がある。そんなことを教えてくれる、小説が好きな人にほど読んでほしい作品。

 

59. 佐野徹夜『アオハル・ポイント』(小説/2018)

人のポイントが見える。ルックスや学力、コミュ力、あらゆる要素から成るポイントが見えてしまう主人公のお話。見えるものに縋ってしまう気持ちはわかる、だって測定しやすいから。それでも、人生にはそういうわかりやすいポイントよりもずっとずっと大切なことがある。それを教えてくれる物語。

 

60. 瀬川コウ 君と放課後リスタートシリーズ(小説/2018~)

ある日、クラス全員が記憶喪失になった。そんな異例の幕開けをするこの物語。そんな斬新な始まり方に惹かれて手に取って、第一巻を読んで大好きな物語だと確信した。しかし、2018年に第一巻が出て以降、二巻が出ていない。そして本作の著者、瀬川コウさんのSNSの更新もほぼ無くなってしまった。また元気な姿を見られることを、このシリーズの続刊や別の作品を手に取ることができる未来を願ってやまない。希望も込めて期間は2018~とさせていただく。

 

61. 綾崎隼『盤上に君はもういない』(小説/2020)

将棋のプロ世界を題材にした物語。ただ一つの強い強い思いがあり、それが叶うならば何もいらない。そんな強い思いを宿した主人公の生き方が純粋に素敵だと思う。人というのは浮気をする生き物だと思う。それは交際相手がいるのに他の人と...という話ではなく。この資格を取るために頑張っていたけど、やっぱりやめた。この大学に行きたかったけど、別の大学でいいや。第一志望ではないけど内定が出たから、この会社に決めてしまえ。夢はあるけど叶いっこないから、会社員として無難に生きていこう。そういった浮気、気の迷い、目標の変更、そんなことが多々起きるのが人生であり、人間だと思う。だが、この主人公は違う。心の底からたった一つの願いだけを望み、ほかの何かを得ても、誰かに褒められても満足することなく、心の底から喜ぶことなく、ずっとずっとその願いだけのために生きている。その姿がとても綺麗だと思った。

 

62. 雷句誠『金色のガッシュ!!』(漫画/2001~2008)

ひと言で表すならば「友情の物語」だろうか。魔界から人間界へ100人の魔物の子が送り込まれ、人間とペアを組み、たった一人の王様を決める戦いを描いた作品。バトルシーンは多々あるが、ただのバトル漫画でもなく、笑いもあり、なにより感動できるポイントがめちゃくちゃに多い作品。大好きな作品なのでいつの日かまた読む機会があれば読みたいと思っている。アニメも存在するし、完成度も高いが、声優の方の事情で主人公の声が一時期変わってしまったのが残念なポイントだと思っているので、個人的には漫画推しである。

 

63. 朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』(エッセイ/2017)

この本は外で読んではいけない。なぜなら絶対笑うからである。フフッという感じではない。アハハッという感じである。朝井リョウが綴るエッセイ集。伝わる人にはこれだけで伝わる。内容を書けばネタバレになってしまうので書けないが、気分が沈んでいても腹を抱えて笑えるエッセイがたんまり入った作品である。前作『時をかけるゆとり』、次作『そして誰もゆとらなくなった』も同様に笑えるエッセイ集である。装丁は本作が一番素敵であるので、本作をランクインとした。繋がっているわけではないが、前作から読んでいたほうがさらに楽しめるエッセイも存在する。

 

64. 菊川あすか『はじまりと終わりをつなぐ週末』(小説/2018)

同著者の作品のなかで、一番好きな作品。当たり前のことに感謝する、やってはいけないことをしたら謝る、一度相手の耳に届いてしまった言葉を取り消すことはできない。それらのことは大人になったら当然のことかもしれないが、きっと子どもの頃はわかっていない。大人の中にだってわかっていない人もいる。それくらい難しいことなのだと思う。その難しいことを経験して理解した”いま”この本に出会えてよかったと心から思う。大人が読むべき本であり、ずっと手元に置いておきたいと思う本。

 

65. loundraw『イミテーションと極彩色のグレー』(小説/2019)

大好きなイラストレーターが小説を書くということで楽しみにしていた本。表紙も挿絵も文章もすべてloundrawが担当するという何とも贅沢で、見たことのないコンセプトの本。イラストはもちろん言うことなし。では肝心の文章は?と言われれば、普通というのが個人的な意見である。やはり小説家である方々の作品たちには叶わないなという印象だった。

 

66. 森見登美彦『熱帯』(小説/2018)

『熱帯』という本を探していく旅のお話。森見作品はどれも文体が特徴的で、先述の通り、私は正直苦手である。それでも、なぜか手に取ってしまう魅力がある。この本もわかったようでよくわからなかったため、ずっと読み返したいと思っている。今度はメモを取りながら。もう一度もう一度という意味で頭に残っているため100作リストに入れてみた。

 

67. 住野よる『麦本三歩の好きなもの』(小説/2019)

三歩という女の子の日常を描いた短編集。生きていれば悲しいことや辛いこと、気に食わないことがたくさんある。それでも、電車で席に座ることができた、天気が良かった、好きなお菓子を食べた、そんな小さな幸せを見つけて笑うことができた日には、精一杯自分のことを褒めてあげよう。そんな気持ちになれる作品。小さな幸せって大事だし、絶大な効力があるんだよ。そんなことを教えてくれる作品。

 

68. 夕鷺かのう『今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います』(小説/2019)

ものすごいタイトルの作品。この本を読み終えたあたりで、新入社員研修を受けていて自己紹介の機会があった。読書が好きですと言ったところ「最近読んだおすすめの本は何ですか?」と聞かれた。この作品のタイトルを言った瞬間に研修室全体が静まり返ったことをよく覚えている。自己紹介が終わり、その研修のトレーナーの方が前に出てきて研修を始める前に「私のことは撲殺しないでくださいね」と言われたのもいい思い出。

 

69. 浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』(小説/2019)

とある私立高校で起きた生徒の連続自殺。それは、みんな仲良しの最高のクラスで起こった。そして耳に飛び込んできた「三人とも自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」という言葉。そこから始まっていく青春ミステリ。本当にこのクラスはみんな仲良しだったのだろうか。なぜ三人の自殺は起きたのだろうか。"あいつ"とは誰なのか。伏線がうまく張られていて回収されていくたびに驚きでページをめくるスピードが上がった。単行本で読み、文庫本でも読んだが、装丁や表紙の関係で単行本派である。

 

70. メンタリストDaiGo『最短の時間で最大の効果を手に入れる 超効率勉強法』(自己啓発/2019)

勉強法を勉強するのが好きだ。闇雲に勉強するのではなく、効率よく勉強していくのが好きなので、勉強法の本は何冊か読んでいる。ほとんどはあまり役に立たないような内容だが、この本はかなり役に立ち、載っている勉強法をいくつも今なお採用している。効率のいい勉強法を探している方は一読の価値あり。断っておくが、勉強法というのは先生や参考書と同じで、好みや合う/合わないがあるため、万人に受けるとは思っていない。いくつか読んでみて、いいなと思うものを実践してみる、実際に良ければ取り入れる、イマイチであれば別のやり方を探すというのを繰り返していくのが面倒ではあるが、最短ルートであるはず。

 

71. 有栖川有栖『月光ゲーム』(小説/1994)

小説を持っているが、これはオーディオブックで聴いた作品。有栖川さんの作品には正直なところ苦手意識がありまして。初めて読んだ『闇の喇叭』があまり好みではなく...。そのため、オーディオブックで聴くことにした。結果的には大変面白かった。聴いた後に文庫本を購入したという形である。続編の『孤島パズル』もオーディオブックで聴き終えている。

 

72. 高畑京一郎タイムリープ あしたはきのう』(小説/1999)

1999年に出たタイムリープものの作品がメディアワークス文庫にて新装版として発行されるということで、小説家の方々の中でかなり話題になっていたように思う。新装版として読んだ。新装版は上下巻で薄めの二冊構成となっている。大変面白かった。上下巻だが薄いということもあるが、圧倒的に速い速度で読み終えることができた。どんな時代にも面白い本はあるものだなと思った。薄めなので読書初心者の方も是非。また、同様のタイムリープものになるが『君と時計シリーズ』よりも理解しやすいと思う。

 

73. 有川浩 図書館戦争シリーズ(小説/2006~2008)

有名すぎて読む前から図書館戦争という名前は聞いたことがあった。巻数も少なくないし、1ページ中の文量も割と多いので避けていた。読むかどうか迷っている人はぜひ読んでほしい。一冊読み始めれば続けて二巻三巻と進みたくなるはずだ。読み始め時点では少々イメージしづらい設定だとは思うが、次第に慣れてきて内容が頭に入ってくるようになると思う。少しだけ勇気がいるが、読んで決して損はない作品。

 

74. 乙一『夏と花火と私の死体』(小説/1996)

ものすごいタイトルである。収録されているのは表題作を含む短編がいくつか。表題作が一番面白いし、こんな物語が書けてしまうことが驚き。子どもが大人たちの追及をかいくぐっていく姿が爽快である。

 

75. 北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』(小説/2015)

ブラック企業で働く主人公は、働くことに疲れ果て線路に飛び込もうとしたところをある男に助けられる。その男は同級生だと言い、名も名乗るが、よく調べていくと不可解なことばかりだった。そんなあらすじのこの本は、タイトルを見た時点で買うことを決めた。仕事をすることは大事だろう。お金を稼ぐために必須だろう。そんなことはわかっているが、真面目に働き続けていくことだけが正解ではないんだと。逃げたきゃ逃げてもいいんだよと。そんなことを教えてくれる。そんな救いの手を差し伸べてくれる大切な本。

 

76. 柴村仁『プシュケの涙』(小説/2009)

夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。彼女はなぜそんなことをしたのか?その謎を探るために二人の少年が動き始める。あらすじに惹かれたこと、フォロワーの方何人にも勧めてもらったこと、それらの理由で手に取った。由良というキャラクターがメインで動くため、由良シリーズと言われることも多い。現時点では四作出ているが、一作目の本作品が好きなので、今回はシリーズとしてではなく単体でリストに入れた。

 

77. 『秒速5センチメートル』(映画/2007)

「それ観るなら、何も予定が入っていない日にしたほうがいいよ」そう友人に言われ、何も予定のない休日の午前中にこの映画を観た。結果として、その友人の助言は正解で、恐ろしいほどの脱力感に見舞われて、その日は結局何もやる気が起きなかったのをよく覚えている。作品自体は短いものである。お勧めするが、何もない静かな休日にどうぞ。監督は新海誠

 

78. 斜線堂有紀『不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語』(小説/2019)

タイトルの通りである。1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語がいくつも収録されている。私の頭では理解できない作品もいくつかあったが、それでも「斜線堂有紀ってすごいな...」と思わせてくれる感情の書き方、題材の選び方、表現の方法。そういうものに触れられるとても好きな作品。

 

79. 知念実希人『ムゲンのi』(小説/2019)

著者最高傑作。そんな売り文句の本だったはずだ。その売り文句は正しく、知念作品を散々読んできたが、最高傑作だなと感じた。知念さんの作品を読むといつも思うのだが「そうくるか....!」という気分になることが多い。この作品は何度もそう思い最後まで駆け抜けた作品。

 

80. 藤石波矢,辻堂ゆめ『昨夜は殺れたかも』(小説/2019)

同じ作品を二人の小説家が執筆する。そんな面白いコンセプトで書かれた作品。男性視点を藤石波矢、女性視点を辻堂ゆめという振り分け方なので、リレー形式のように書かれたのかなと思うと、その想像も面白い。内容はもちろん面白かったし、こういう意図で書いた伏線が、全然違うとらえ方をされていたみたいなことがあったらどうするのだろう、それはそれで面白くなりそうだけど...と思いながら読んだ。

 

81. 米澤穂信 古典部シリーズ(小説/2001~)

「やらなくていいことはやらない。やらなければならないことは手短に」そんな省エネを絵に描いたような人間、折木奉太郎を主人公に描かれる、主に学校を舞台としたライトミステリ。単純に、こんなコンセプトを持っている主人公が好きなのだ。時として感情が揺れることはあれど、基本的には冷静で、自分がやらなくてはならないことをやる、それ以外はどうでもいい、みたいなスタンスを貫くキャラクターが好きである。折木奉太郎、浅井ケイ、七草あたりが個人的なその分類に当てはまる。

 

82. 五十嵐貴久 リカシリーズ(小説/2002~)

いやあ、えぐい。読み終えた時の感想はこれに尽きる。人間的な怖さを描いた傑作である。シリーズすべてを読んだわけではないが、時間をかけて読んでいこうと思っている。先述の通り、あまり暗い話は好きではないし、人間的な怖さも得意分野ではないのだが、なぜか時々無性に読みたくなる時期がくる。そんなときに手に取りたくなる作品。一作目『リカ』の終わり方は本当にリアルにイメージしてしまい、顔をしかめながら読んだ。

 

83. 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』(小説/1992)

東野圭吾作品。フォロワーの方に勧めていただいた。そんなトリック気づかないよ...と見事に一本取られた作品。勧めてくれた方のことを考えると、なるほど、だからこの作品を勧めてきたのねと読後に改めて思った。

 

84. 青崎有吾 裏染天馬シリーズ(小説/2012~)

『体育館の殺人』から始まるシリーズ。裏染天馬という超優等生が探偵役となり事件を解決していくミステリ。本当に些細なところが伏線をなっており、論理的な解決をもたらす作品。読者への挑戦状もある。つまり、とんでもない発想力がいるとか、超能力者が犯人なんてことはなく、挑戦状のページまでに読んできた内容さえあれば読者にも事件が解けることを意味する。私は挑戦状をまともに受けて立ったことはないのだが、「読者への挑戦状がついている=ロジカルに事件解決まで進むことができる」という安心感があるため、読者への挑戦状がついているミステリは好きである。第一作『体育館の殺人』を読んで以降、どんどん読み進めてしまい既刊はすべて読み終えてしまったため、新刊の発売情報が出てくることを待っている。

 

85. 斜線堂有紀『恋に至る病』(小説/2020)

150人以上の被害者を出した自殺教唆ゲーム『青い蝶』。その主催者は誰からも好かれる女子高生だった。そんなあらすじのこの物語の題材となっているのはロシアで存在した自殺教唆ゲーム『青い鯨』。この本を読んだ付近で読んでいた別の本も同じく『青い鯨』を題材としていたことがとても記憶に残っている。題材となったものなど調べてから読まないので、本当に偶然だった。この自殺教唆ゲームの主催者となった女子高生をあなたが愛してしまったとしたら、どうしますか?

 

86. 『FINAL FANTASY XIII』(ゲーム/2009)

覚えているなかで一番新しい、きちんとクリアまで持っていったゲームである。本作は割とFFユーザの中では低評価だった気がするが、個人的にはかなり好きでハマってずっとプレイしていたように思う。ただ、昔からいわゆる全クリみたいなことはしたことが無く、本作でもそんなことはしていない。いつかできたらいいなとは思っているが、私が全クリを目指すほどにゲームに熱中する時期はこの先来るのだろうか。バテンカイトスと同様にリマスターがSwitchで出るなんてことになれば、そのときはまたやりたいと思う。

 

87. 知念実希人『レフトハンド・ブラザーフッド』(小説/2019)

分厚い作品だが割とすらすら読める。知念作品ということで内容の面白さは申し分ない。この作品をあえてリストに入れたのは性描写がものすごく上手かったから。小説というのは文章からすべてを想像するしかなく、どこまでの情報を残し、どこからの情報は切り捨てるかが大事なものだと思う。それがものすごく上手く、文章だけでここまで鮮明なイメージができるように表現できるものかと思ったのを覚えている。

 

88. 菊川あすか『君がくれた最後のピース』(小説/2021)

菊川あすかという小説家が書く作品は総じて「いま当たり前であることは、決して当たり前ではない」というメッセージを感じる。この作品はそれが顕著だった。謝れば許してくれる、文句を言えば怒られる、感謝をすれば笑ってくれる。「普通じゃん」そう思うだろう。でもそれは普通じゃない。好きだから、大切だから、愛しているから。そんな理由が背景にあって、初めてそれは普通になる。特別を普通にしてくれている人がいる。だれの人生でもそうなんだよ、もちろんあなたの人生も。そんなメッセージを強く感じた。こんな文章を書いているとSUPER BEAVERのMCを思い出す。「普通も特別も紙一重。普通にご飯が食べられること、友達がいること、生活ができること、音楽が聴けること、楽しいって思える時間があること、感動できること、悲しいこと。いろんなことがあると思うけど、その根底には、その一番根っこの部分には、いろんな人のいろんな想いと、いろんな特別があると思ってます」。ずっとそんな気持ちを忘れないように定期的に読み返したい作品。

 

89. 相沢沙呼 城塚翡翠シリーズ(小説/2019)

まず表紙が素敵。medium,invert,invertⅡまで今出ているだろうか。推理作家として難事件を解決してきた男と霊媒である女がタッグを組み、事件に立ち向かっていくお話。そんな流れで進んでいく本作だが、待ち受けていた結末は予想できず大変面白かったのを覚えている。invertⅡは購入済みなのだが、未読の状態なので、そろそろ手を付けたい。

 

90. 伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(小説/2020)

こういう話が結構好きである。子どもが大人に反抗するような。大人が必ずしも正しいわけではないと教えてくれるような。昔から自分自身感じていたからだと思う。「この先生の言ってることはおかしい」「あの先生は自分が間違っていたことがわかったのに謝らない」「通っていたサッカーチームの監督が理不尽に自分のことばかり怒る」。そういったことを日ごろから思っていた。もちろん、自分の感じ方がおかしくて、きちんと会話をすればこちらの認識が間違っていて、向こうが正しかったという可能性だって大いにあったと思う。だけど基本的に「大人、特に先生というのは、子どもを言いくるめることでお金をもらっているしょうもない人たちだな」と思っていた。だから、反抗してやろうぜ、大人を負かしてやろうぜといった姿勢は、見ていてとても清々しく楽しい。あの頃の自分は思っているだけで行動できなかったから。

 

91. 朝永理人『幽霊たちの不在証明』(小説/2020)

かわいらしい表紙のイラストからは想像できないほど緻密に組まれたミステリ。時間経過を細かく記載し、いたるところに伏線を張り、それを論理的に回収する。たまたま書店で面陳されているのを見つけ、手に取ったが大当たりだった。学校の文化祭を舞台としているのも好みに刺さった。

 

92. 喜友名トト『リバーシブル・ラブ ー初恋解離ー』(小説/2019)

普通とは何だろうか。特別とは何だろうか。特別に扱われることが必ずしもいいことだとは限らない。くだらないことで笑い合って、手を繋いで走って、カフェで一緒にお茶をして。そんな普通のことが、ありきたりじゃんって馬鹿にされそうなくらい普通な時間が、特別に変わることなんていくらでもある。なにをするかじゃない。だれとするかだ。物語の軸とは異なるかもしれないが、そんなことを教えてくれたとても大切な作品。

 

93. 逸木裕『銀色の国』(小説/2020)

『恋に至る病』のコメントで「『青い鯨』を題材とした本を同時期に読んでいた」と書いたのを覚えておいでだろうか。それが本書である。同じものを題材としていながら、こんなに違う物語ができるのだなと当たり前のことを感じた。もちろん読後の感じ方、読後からしばらく経った今持つイメージにはだいぶ違うものがある。『恋に至る病』は純粋に物語として楽しめる本だというイメージ。対してこちらは恐ろしいことだが、少し気を抜くと銀色の国に自分も連れて行かれてしまうようなイメージである。きちんとした精神を持ち合わせているときに読むことをお勧めする。心身ともに疲弊しているようなタイミングで読むと万が一が起こりかねないので、お勧めできない。

 

94. 似鳥鶏,相沢沙呼,梓崎優,市井豊,鵜林伸也『放課後探偵団』(アンソロジー/2010)

やはりアンソロジーというのは面白い。特定のテーマについて複数著者が短編を綴っているため、そのテーマに対する著者それぞれの向き合い方の違いを見ることができるのが面白さの一つである。また、私の場合はアンソロジーに好きな著者が参加しているから読むということが多い。そのため、読んだことのない作家の短編を読むことができるのがとても有意義であり、もう一つの面白さである。アンソロジーで知った著者の本を買って読むこともある。本書『放課後探偵団』には、第二巻も存在しており、参加著者の異なるミステリ短編集となっている。もちろんアンソロジーであるため、一巻から読んでおく必要はない。どちらから読んでも、どちらかだけ読んでも十分楽しめるものである。個人的には表紙は二巻のほうが好き、内容は一巻のほうが好き。

 

95. 浅倉秋成『九度目の十八歳を迎えた君と』(小説/2019)

人はみな、大人になるにつれ夢を見ることをやめる。子どもの頃はどんな夢を語っても周りが褒めてくれるし応援してくれる。それが中学生、高校生、大学生、社会人と進んでいくにつれて、周りが馬鹿にし始める。「そんなの無理に決まってんじゃん」「夢の見すぎだろ」「もういい歳なんだから夢なんか見ずに働け」。でもきっと違うのだと思う。いつまでだって夢を見続ければいいし、追いかければいい。諦めさえしなければ、どこにだっていけるし、なんにだってなれる。そんなことを教えてくれる作品。こういう作品に出会うとBUMP OF CHICKENのディアマンという曲が頭の中を流れる。「何にだってなれる 今からだって気分次第 退屈なシナリオも 力ずくで書き直せる」そんな歌詞に何度も背中を押された。自分自身の人生だ。他人のせいにしてはいけない。自分の人生のシナリオを決めるのも、やっぱ違うなと思って書き直して方向転換するのも、自分で責任を持っておこなっていきたい。そういう姿勢を大人が示すことが、子どもが胸を張って夢を持つことができる条件であるように思う。

 

96. 『ジョゼと虎と魚たち』(映画/2020)

2003年に映画化された実写映画は観ていない。本作は2020年に公開されたアニメーション映画である。映像が綺麗であり、主題歌含め音楽も申し分ない。誰かに優しくしよう、誰かのことを応援しよう、大好きな人の隣にいたい。そんな感情を抱く作品。円盤も所持しているので、観返したいところ。同名の小説も存在するが、かなりテイストが違うので読む際にはご注意を。

 

97. 古宮九時『彼女は僕の「顔」を知らない。』(小説/2021)

10年前の事件当日、怪しげな男と遭遇した少女。その少女を侵す病は失貌症、人の顔が認知できない病気。10年を経てあの事件が再び動き出す。そんなあらすじのこの物語。一番面白いのは、結末の違う別ver.が用意されているところ。2ver.ある作品は初めて出会ったし、この別ver.が本書とはガラリと雰囲気が変わっているのがまた面白い。読む方はぜひ別ver.も併せて。ただ、別ver.の入手の仕方を忘れてしまった。期間限定とかだったら申し訳ない。

 

98. 似鳥鶏 市立高校シリーズ(小説/2007~)

『理由あって冬に出る』から始まる高校を舞台としたミステリシリーズ。登場人物全員がどこか可愛げのある感じであり、文体も読みやすく、どんどんページが進む。すごく軽めの恋愛要素も時々顔を出しながら進んでいく物語が、イメージしやすく入り込みやすいので、シリーズ既刊はそこそこ多いがすぐに読めてしまうと思う。一冊目の『理由あって冬に出る』だけはオーディオブックで聴いたため書籍を持っていない。いずれ買いたいと思っている。既刊のうち最新刊のみまだ読めていないのだが、これを読んだらこのシリーズがひとまず読めなくなってしまうという思いから、読みたいと何度も思いつつ、本棚にある最新刊に伸ばした手を引っ込めている。 

 

99. 浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(小説/2021)

第一志望の採用試験。最終選考はグループディスカッション。そこで見つかる「○○は人殺し」という告発文。そんなことが起きたらどうする。平常心でいることができるだろうか。○○を蹴落としにかかるだろうか。就活を舞台として、人間の誰もが持つ醜い感情をうまく用いて描かれる本作。たった10分の面接で、たった1枚の紙っぺらで何がわかる?就活を経験すると誰もが思うだろう。そしてそのあとに出てくる感情は「つまらない」「くだらない」だろう。そんな、つまらなくてくだらない就職活動という名を冠したゲームに、ちょっとしたスパイスを混ぜた本書は就活生ではないときにどうぞ。

 

100. 市井豊 聴き屋シリーズ(小説/2012~)

『放課後探偵団』に参加していた市井豊の代表シリーズ。『放課後探偵団』に収録されていた「横槍ワイン」という市井さんの短編が聴き屋シリーズの一編となっていた。その短編が大変気に入ったため、本シリーズを手に取った。面白いのだが、既刊が二冊しかないのが残念。続刊が出ることを強く望んでいる。

 

 

--------以下コメント--------

と、ここまで100作選んでみた。正直に言えば101作以上出てきてしまい、どれを外そうかと思った結果の100作となっている。そして、これは選出している中で気づいたことだが、この記事を来月や先月書いていたら入っていなかったであろう作品が存在する。もちろん、この先いつ選んだとしても不動でこの中に入ってくる作品も数多くある。というわけで、"2023年4月頭の時点で100作選んでみることにした"という形になった。普段SNSには書かないような作品も入っていると思う。フォロワーの方については、そのあたりも楽しんでいただけると嬉しい限りである。ひとまずこの状態で公開をする。コメントは追々。(2023/4/9)

 

 

さて、夏季休暇を利用してずーーーーーっと放置していたこの記事を完成に持っていくことに決めたのが5日ほど前。今この文章を書いているのが夏季休暇最終日の14:20。無事100作へのコメントを付け終わり、最後のこのコメントを書いている。無事終わってよかったという安堵、放置していたが度々やらなきゃという気持ちにはなっていたので、やり遂げたことによる達成感と解放感に見舞われている。この5日間で15000字ほど書いただろうか。それだけ書くと打鍵する音や、文章が進んでいくことが楽しくなってきてしまい、また文章を書きたいなと思っている。こんな風にブログ記事でも、趣味で書く小説でも、またいずれ書く日が来れば嬉しいなと思う。最初から最後まで、気になった作品のみ、100作リストのみ、いずれにせよ本記事をご覧になって下さり、ありがとうございました。(2023/8/20)